rust_b

鉄の錆(腐食)について

rust_a

鉄は、水分と酸素があれば錆びる(腐食する)ことは、学校でも必ず教えられることなので、広く知られています。
しかし、錆(腐食)の内容だとか、錆びる(腐食する)メカニズムについては、意外と知られていないようです。

まず「鉄の錆」ですが、これは「鉄の酸化物」、つまり鉄が酸素と化合した物質なのです。多くの方がよく目にする「鉄の錆」は、赤い色をした「錆(Fe₂O₃)」だと思いますが、これは鉄(Fe)が二つ、酸素(O)が三つで構成されています。この赤錆は、錆がどんどん進行する性質があります。
鉄の錆(酸化物)には、他に「Fe₃O₄」などもありますが、これらの酸化鉄(黒錆)は、錆は進行せず、むしろ赤錆の発生を防いでくれます。

さて次に知って頂きたいことは、「金属の錆びやすさ」についてです。
これは、難しいことばですが、標準酸化還元電位によって、「錆びやすさ」が決まります。
これを簡単に表現すると、電子を放出しやすい金属は錆びやすくて、放出しにくい金属は錆びにくいということになります。

ここで、いくつか身近な金属の「標準電極電位」をお伝えします。

+1.69
+0.80
+0.34
-0.44
アルミニウム
-1.66

この表は、鉄やアルミニウムは「錆びやすい金属」であり、金・銀・銅は錆びにくい金属であることを示しています。

しかし、鉄が錆びやすいといっても、赤錆ではなく黒錆(Fe₃O₄)となると話は少々変わってきます。黒錆の場合はこれを「不働態」といって、錆は極めて進行しにくくなる性質を持っています。

金属の標準電極電位は、上記のように、金属ごとに異なりますが、電位が異なる金属を接触させると、また面白いことが起こります。
電位が高い金属を「貴な金属」、低い金属を「卑な金属」と呼ぶのですが、電位差が異なる金属を接触させた場合、「卑な金属」が腐食する(錆びる)のです。
これを「電位差腐食」と呼びます。

従って、鍋やフライパンの取っ手に接触する個所を腐食させないために、プロが使用する鍋やフライパンを見れば分かりますが、本体がアルミ鍋の場合は取っ手やハンドルの素材もアルミにしますし、本体が鉄の場合は、取っ手やハンドルの素材も鉄にします。

本体がアルミでも、取っ手やハンドルを電位の高いステンレスにする場合は、二つの金属の間に絶縁体を挟み込み、製造します。

ステンレスは合金ですので、「金属の標準電極電位表」には掲載されていませんが、その電位はほぼ「銅」と同等の電位です。
従って、本体が鉄でハンドルがステンレスの場合も、ステンレスに比べ電位の低い、卑の金属である本体の鉄が腐食しないよう、間に絶縁体を入れる必要があります。

ここまで、可能な限り、短く、かつ理解して頂き易く書いたつもりなのですが、読み返して見ると、これでも結構難しいように感じ、大変申し訳なく思っています。

しかし、もっと詳しく知りたいと思われる方は、以下の箇所をクリックし、専門ページをご覧下さい。

  1. 「鉄とステンレスは接触させてはいけない」
  2. 「ステンレスと異種金属の接触についての問題点」:ステンレス協会
  3. 「金属製品の大敵!腐食、さびのしくみと防食」:minsakuみんなの試作広場